香水を買ったのに、ほとんど使わないまま棚に置きっぱなしになっている。そんな一本が私にもあります。
原因ははっきりしています。自分の好みの「軸」を持たないまま、店頭でなんとなく選んでしまったからです。この記事では、その失敗をきっかけに手持ちの香水を棚卸しして、自分の好みを言葉にできるようになるまでを書きます。
「ナイルの庭」に飽きた日、伊勢丹で選んだ一本を使わなくなった
エルメスの「ナイルの庭」は、私が香水を好きになった原点の一本です。長く愛用していたのですが、あるときから少しずつ飽きを感じるようになりました。香りそのものが嫌になったわけではなく、単純に「次の一本」を探したくなったのです。
そこで伊勢丹新宿に足を運びました。ところが、これが思った以上に難しかった。カウンターをいくつも回り、その場では「良い香りだな」と思って一本を選びました。
結果は失敗でした。買ってしばらくすると手が伸びなくなり、ほとんど使わないまま終わってしまったのです。以来、新しい香水が欲しくても自信が持てず、手が出せない状態が続いていました。
手持ちの香水を「好き」と「苦手」に並べ直した
このままではまた同じ失敗をすると思い、新しい香水を探す前に、いま持っているものを整理することにしました。やったことは単純で、手持ちを「よく使う」と「使わない」の二つに分けただけです。
よく使っていたのは、エルメスの「ナイルの庭」、Aesopの「タシット」、Aesopの「マラケッシュ」の3本。この3本の使用感については以前まとめているので、詳しくは私の香水Best3をご覧ください。
一方で、同じAesopでも「カースト」と「ヒュイル」は、購入したのに手が伸びませんでした。嫌いというほどではないのですが、つける前に「なんとなく気分が乗らない」という感覚が続いていたのです。
好きな3本に共通していたのは「グリーン」と「温かみ」
3本のノートを並べてみると、思っていた以上にはっきりした共通点がありました。
| 香水 | 立ち上がり | 最後に残る部分 |
|---|---|---|
| Aesop マラケッシュ | ベルガモット・ネロリ・ジャスミン | サンダルウッド・シダーウッド・クローブ |
| Aesop タシット | ユズ・バジルグランベール・クローブ | シダーウッド・ベチバーハート・アンバー |
| エルメス ナイルの庭 | グレープフルーツ・グリーンマンゴー・トマト | ムスク・イリス・インセンス・シナモン |
立ち上がりは柑橘かグリーン、そして最後に残るのは樹木や樹脂の温かみ。3本ともこの形をしていました。甘さはあっても、あくまで控えめなアクセントにとどまっています。
「清涼感から入って、温かさで終わる」。これが自分の好みの骨格だったわけです。
苦手だった2本が教えてくれた、避けるべき方向
好きなものより分かりやすかったのは、むしろ苦手だった方でした。
Aesopの「カースト」は、岩肌や潮風を思わせるミネラル感が持ち味の香りです。体温に乗っても温もりが出にくく、どこか硬く、冷たい印象が残ります。「ヒュイル」の方は、スモーキーで乾いたウッディさが前に出ます。乾いた森や焚き火のような香り、といえば伝わるでしょうか。
つまり私が手を伸ばせなかった2本は、どちらも「乾いていて、冷たい」。好きな3本の「温かみ」とちょうど逆を向いていました。苦手の理由がはっきりしたことで、避けるべき方向も決まりました。
ブランドではなく「調香師」で辿ると、外れが減る
もうひとつ手がかりになったのが、調香師という視点です。
「ナイルの庭」は、ジャン=クロード・エレナさんが手掛けたエルメスの「庭シリーズ」の一本です。このシリーズには似たトーンの香りが揃っているので、一本が合えば他も試す価値があります。
Aesopでも同じことが起きました。最新作の「オルナー」を試したとき、タシットと近い空気を感じたのです。調べてみると、どちらもセリーヌ・バレルさんが手掛けていました。ブランドで横に探すより、調香師で辿った方が当たりに近づける。これは思わぬ収穫でした。
次に試したい3本
軸が決まったので、候補も自然に絞れました。
- エルメス 屋根の上の庭 — 以前に試して良い香りだと思った一本。庭シリーズなので方向性は間違いないはずです
- エルメス 李氏の庭 — 以前に使っていた時期があります。キンカンのような甘さがありつつ柑橘を感じる香りで、リピートしたい一本
- Aesop オルナー — タシットと同じ調香師の最新作。まだ試しただけなので、これから本格的に検討したいところです
3本とも「グリーンから入って温かみで終わる」という軸から外れていません。以前のように、その場の勢いで選ぶことはもうないと思います。
店頭で好みを言葉にできるようになった
一番の変化は、店頭での会話です。いまは店員さんにこう伝えられます。
清涼感のあるグリーンのような感じであるものの、温かみがある匂いが欲しいです。甘味があるものでも大丈夫です。一方で、冷たさのあるようなものは苦手です。
これだけ伝われば、店員さんの方から的確な提案が返ってきます。カウンターを回りながら「良い香りですね」としか言えなかった頃とは大違いです。
香水選びが難しいのは、香りが感覚的なものだからではなく、その感覚を言葉にしていないからなのかもしれません。手持ちを並べ直すだけなら、今日からでもできます。


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