前回、スモールサイズのパズルバッグを手に入れた経緯を書きました。あの感動からまだ数週間も経っていない頃のことです。ロエベから、新しいコレクションが発表されました。その中に、フェザーライト パズルバッグの「ラージサイズ」があったのです。
ラージサイズの発表と葛藤
ロエベの公式サイトを見ていた時のことです。「Featherweight Puzzle Bag – Large」という文字が目に飛び込んできました。やはり出たか——。そう思いました。メンズラインとして発表されたラージサイズ。スモールサイズはレディースライン、ラージサイズはメンズラインという棲み分けだったようです。私がスモールを購入した時には、まだラージは存在していなかったのです。
画像を見ながら、正直に言えば、本当に欲しかったのはラージサイズでした。当時から、パズルバッグにはラージサイズの展開があることを知っていました。しかしそれは通常のパズルバッグで、フェザーライトにはスモールサイズしかなかったのです。「フェザーライトでラージがあったら……」そう思いながらも、存在しないものを望んでも仕方がない。そう自分に言い聞かせていました。
スモールサイズを使い始めて気づいたこともありました。荷物が、入りきらないのです。財布とポーチ、水筒、そしてiPad。私が普段持ち歩きたいものは、スモールサイズだと少しきつい。無理に詰め込むこともできますが、それではパズルバッグの美しいフォルムが台無しになってしまいます。ジョナサン・アンダーソンの言う「使い込まれた美しさ」と、荷物でパンパンになった状態は、まったく違うものです。「やっぱり、ラージサイズが欲しかった……」使うたびに、そう思うようになっていました。
とはいえ、冷静に考えれば無理がある話でした。つい数週間前に高額なバッグを購入したばかりなのに、また高額なバッグを買う。しかも同じデザインのサイズ違いを。普通に考えれば、理解されない買い物でしょう。頭の中で、冷静な自分が「スモールで我慢すればいいじゃないか」「どうしてもというなら、スモールを売ってからラージを買えばいいじゃないか」と言ってきます。でも、心は別のことを考えているのです。それに、黒のラージサイズのフェザーライトが私にとってのベストなのですが、またいつかそれが発売されるのではないかという思いもよぎりました。
何日も悩みました。公式サイトでラージサイズの写真を見ては閉じて、また見ては閉じる。そんなことを繰り返していました。でも、ふと思ったのです。ジョナサン・アンダーソンがロエベを離れるというニュースを聞いた時、「買うなら今しかない」と思ったこと。あの時の気持ちと、今回は同じなのではないかと。フェザーライトのラージサイズも、ジョナサン・アンダーソンがロエベで手掛けるおそらく最後のコレクションの一つ。こんな人気商品、いつまでも買えるとは限りません。それに、人生で高価なバッグを連続で買うことなど、もう二度とないでしょう。たった一度くらい、こんな贅沢をしてもいいのではないか。そう思った瞬間、決心がつきました。
念願のラージサイズを手に入れる
決心がついた私は、新宿伊勢丹へ連絡を入れました。するとありがたいことに、ラージサイズの茶色が入荷次第、取り置きをしてくださるとのこと。それから2週間ほど、毎日スマートフォンをチェックする日々が続きました。仕事中でも、通知音が鳴るたびにドキッとします。
そして、ついにその日が来ました。「お問い合わせいただいておりましたフェザーライト パズルバッグ ラージサイズ、茶色が入荷いたしました」伊勢丹からの着信を見た瞬間、思わず「やった」と声が出そうになりました。
翌日、仕事を早めに切り上げて伊勢丹へ向かいました。ラージサイズを手に取った瞬間、「これだ」と思いました。スモールサイズの可憐さとは違う、堂々とした存在感。それでいてフェザーライトならではの驚くほどの軽さ。メンズラインとして展開されているだけあって、容量もたっぷりです。「私が本当に欲しかったのは、これだったんだ」心からそう思いました。
会計を済ませながら、ふと気づいたことがあります。もし最初からラージサイズが存在していたら、もしスモールサイズとの出会いがなかったら、ジョナサン・アンダーソンの「使い込まれた美しさ」という哲学を、あそこまで深く知ることはなかったかもしれません。スモールサイズを実際に使ってみたからこそ、ラージサイズの良さも、より深く理解できるのです。
2つのパズルバッグと「一生に一度」の贅沢
現在は、2つのパズルバッグをシーンによって使い分けています。黒のスモールサイズは、身軽に出かけたい時やちょっとしたお出かけ、ディナーの時に。小ぶりなサイズ感が、エレガントな雰囲気を演出してくれます。茶色のラージサイズは、仕事の日や荷物が多い日に。たっぷりとした容量がありながら、驚くほど軽いので、一日中持ち歩いても疲れません。同じデザインでも、サイズと色が違うだけで、こんなにも印象と用途が変わるものなのだと、改めて感じています。
高価なバッグを短期間に2つも購入する。しかも同じデザインのサイズ違いを。客観的に見れば、ちょっと理解されにくい買い物かもしれません。でも、私にとっては「一生に一度」の決断でした。ジョナサン・アンダーソンという稀代のデザイナーが、ロエベで最後に残してくれた傑作。それを2つのサイズで所有できる幸運。後にも先にも、こんな買い物をすることはないでしょう。だから、後悔はありません。
使い込むほどに、自分だけのものに
購入から数ヶ月が経ち、2つのパズルバッグは少しずつ私に馴染んできました。ジョナサン・アンダーソンの言った「使い込まれた美しさ」。それが、徐々に形になってきているのを感じます。スモールサイズは、私の持ち方の癖で右側が少しくたっとしてきました。ラージサイズは、荷物の重みで底の部分が柔らかく沈むようになってきています。それは劣化ではなく、育っている証。これから何年も、何十年も、この2つのバッグと共に過ごしていくのでしょう。使い込むほどに、世界にたった一つの、私だけのパズルバッグになっていきます。
この経験を通じて、改めて思うことがあります。「本当に欲しいもの」に対しては、正直であっていいのだということです。もちろん、妥協や我慢、冷静な判断も大切です。でも、人生の中で本当に心から欲しいと思えるものに出会えることは、そう多くありません。だからこそ、そういうものに出会えた時は、思い切って手を伸ばしてもいいのではないでしょうか。無理のない範囲で。でも、「一生に一度」と思えるのなら。
感謝と、これからのこと
2つのパズルバッグを見るたびに、ジョナサン・アンダーソンへの感謝の気持ちが湧いてきます。ロエベを、こんなにも魅力的なブランドに育ててくれたこと。「完璧な不完全さ」という新しい美の概念を教えてくれたこと。そして、パズルバッグという時を超えて愛される名作を生み出してくれたこと。彼は次のステージへと進みましたが、その作品は永遠に残り続けます。私の手元にある2つのパズルバッグも、その証の一つです。
前回の記事と合わせて、2つのフェザーライト パズルバッグとの出会いの物語をお話ししました。奇跡的な出会いと、運命的な再会。迷いと決断。そして、「一生に一度」の贅沢。この2つのバッグは、私にとって単なるファッションアイテムではありません。人生の大切な決断の記憶であり、これから共に歩んでいくパートナーです。
もし、あなたも「本当に欲しいもの」に出会ったなら。その思いに、正直になってみてください。後悔のない選択を、心から応援しています。

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