2025-26SSシーズンのパリのランウェイが一通り、終わり、少し時間が空いてしまいました。様々な媒体で、すでにインタビューや詳細が発表されていますが、私なりに感想を改めて記載してみたいと思いました。
改めて、私の好きなkolorとDiorのディレクター交代が大きな話題になりました。どちらも強烈な個性とファン層を抱えるブランド。だからこそ、“次の章”の幕開けに、多くの人が注目していたのではないでしょうか。僕自身もその一人です。
今回は、新生kolorと新生Dior、それぞれのファーストランウェイ/ファーストルックを見て感じたことを、率直に書いてみようと思います。
新生kolor──「白」からはじまる模索の旅路
まずは、堀内太郎さんが初めて手がけたkolorの26SSから。
テーマは「time travel chic humor the hours the waves」。これまでのkolorではあまり前面に出されてこなかった、抽象的で詩的な言葉が先に提示されたのが新鮮でした。
最初のルックを見て、まず驚いたのがその白の多さ。ファーストルックで、ここまで潔く白を基調にするkolorは、正直今まで見たことがありません。そこには「新しいkolorの表明」のような意思も感じ取れました。

とはいえ、完全に切り捨ててはいない。adidas by kolorを思わせるショートパンツが登場したあたりには、これまでのブランドの歩みに対する敬意とユーモアがにじんでいたと思います。
ルックが進むにつれて登場するのは、これまでのkolorではあまり見なかった生地使いや、構成のシンプルさ。言い換えれば、「満足して立ち止まらない」という姿勢がはっきりと現れていたコレクションでした。
堀内さんは“継承”ではなく、“更新”を静かに模索している。そんな印象を強く受けました。
インタビューも公開されており、舞台裏にも多く言及されており、興味深い内容になっております。
新生Dior──ジョナサン・アンダーソンの「越境」と静かな衝撃
そしてもうひとつ、大きな注目を集めたのがDiorのメンズです。新しくディレクターに就任したのは、LOEWEでもおなじみのジョナサン・アンダーソン。この人事は国内外でも大きな話題となり、当然ながら今回のショーには高い関心が寄せられていました。
ファーストルックでは、Diorの象徴とも言えるバージャケットが登場。ただし、今回はメンズ仕様に再構築されています。
もともとレディース向けのアイテムを、ジョナサンがこの場面で男性の身体に合わせてきたこと自体、すでに「境界線を取り払う」という彼の思想の表れなのではないでしょうか。

その思想は、ボトムの構造にも現れていました。布を幾重にも重ねて“ひだ”を作り出す構成は、どこかドレスのような雰囲気を感じさせるもの。性別という枠を、静かにでも確実に超えていく服づくりは、LOEWEでも見られた彼らしさそのものです。
ただ一方で、僕個人として少し物足りなさを感じた部分もあります。
それは、“欲しくなるバッグ”の登場がなかったこと。LOEWEではPuzzleバッグのようなアイコンが出てきたのに対し、今回のDiorでは既存のトートバッグに新たなグラフィックを施した程度。メッセンジャーバッグも登場しましたが、「今すぐ欲しい!」という感情を刺激されるまでには至らなかったのが正直なところです。
二つの“初回”に見る、ブランドの「余白」と「本音」
どちらのブランドも、ファーストシーズンとしては慎重で、それでいて明確に“らしさ”の再定義を試みていたように思います。
- kolorは「色」を抑えて、新たな質感へと向かう余白を提示
- Diorは「伝統」を活かしながら、“性別”という構造に揺さぶりをかけてきた
どちらも「いきなり大きく変える」のではなく、静かに次のフェーズを始めようとしている──そんな誠実さのあるショーでした。
終わりに|次の一手に、期待を込めて
ファーストコレクションは、ある種の“助走期間”のようなもの。ディレクターが新しくなったブランドが、自分たちの足場を確認しながら、徐々に次のステップへと進んでいく。
今回のkolorとDiorは、まさにその“助走”の精度を測るようなシーズンだったと感じました。
次に彼らが何を見せてくれるのか。新しい声がどう育っていくのか。2026SSや次のコレクションがすでに楽しみです。
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